キングカズ加入で注目度急上昇のJFLはこんなリーグだ!〜Jリーグ入りを目指すクラブ目線〜

キングカズ加入で注目度急上昇のJFLはこんなリーグだ!〜Jリーグ入りを目指すクラブ目線〜

12のチームが”J入り”を目指す

「キングカズ」こと三浦知良選手が鈴鹿ポイントゲッターズに加入したことで注目度急上昇のJFL(日本フットボールリーグ)。

日本サッカーのトップリーグは紛れもなく「Jリーグ」で、JリーグはJ1~J3までの3部構成。JFLは「実質的な4部リーグ」と表現されますが、同時にアマチュアの最高峰リーグというもう1つの顔も持っています。

2022年は16クラブで優勝を争うJFLですが、そのうち実に12のクラブがJリーグ入りを表明しています。

Jクラブ不在の三重・島根・奈良・滋賀・高知にもJ入りまであと一歩のクラブたちが!

 

(Jリーグ入りを目指しているクラブ)

ヴェルスパ大分、鈴鹿ポイントゲッターズ、FC神楽しまね、FC大阪、FCティアモ枚方、ラインメール青森、奈良クラブ、ヴィアティン三重、MIOびわこ滋賀、高知ユナイテッドSC、東京武蔵野ユナイテッドFC、クリアソン新宿

しかし、優勝すればJ3リーグに昇格できるというわけではなく、Jリーグ入会への3つのハードルをクリアする必要があります。

 

Jリーグ入りへの3ステップとは

①Jリーグ百年構想クラブへの認定

Jリーグの公開資料によると、「一定の財務基準」「下部組織(ユースもしくはジュニアユース)の活動」「ホームタウンからの応援」などの主な認定要件をクリアする必要があります。Jリーグ百年構想クラブへの申請は前年の11月末までに必要で、90日以内に可否がわかります。2022年の認定については、2月28日のJリーグ理事会で決定するとのこと。

上記のJリーグ入りを表明しているクラブの中で、21年にJリーグ百年構想クラブに認定されていたのはヴェルスパ大分、鈴鹿ポイントゲッターズ、FC大阪、ラインメール青森、奈良クラブ、ヴィアティン三重、そしてJFL初参戦のクリアソン新宿の7クラブ。

Jリーグ入りを表明している残り5クラブのうち高知ユナイテッドSCが21年11月30日にJリーグ百年構想クラブへの申請を行なったと正式に発表しています。高知ユナイテッドSCとしては、JFL開幕前の2月28日に大きな第一関門が待っていることになります。百年構想クラブに認定されることで、チームだけでなくホームタウン全体に大きなムーブメントを巻き起こしたいところです。

ちなみに、百年構想クラブへの加盟には年会費120万円が必要です。夢だけでなく、覚悟も必要ということでしょうか。

②J3クラブライセンスの取得

Jリーグ百年構想クラブの中で次年度のJリーグ入りを希望するクラブは、6月末までにJ3クラブライセンスの申請をする必要があります。Jリーグが公表している主な審査基準は、百年構想クラブの基準と比較してかなり詳細になっています。

 ・アカデミーチームの運営

 ・5,000名以上のホームスタジアムの確保

 ・クラブ運営の組織体制

 ・一定の財務基準(債務超過がないなど)

J3クラブライセンスは9月ごろに認定され、上記クラブのうち21年にJ3ライセンスを取得したのは鈴鹿ポイントゲッターズ、FC大阪、ラインメール青森、奈良クラブ、ヴィアティン三重の5クラブ。20年に優勝、昨年3位だったヴェルスパ大分にとっては6月末までのライセンス申請がキーポイントとなります。

ヴェルスパ大分の公式サイトでは昨年ライセンス申請見送りの大きな理由として「施設基準」を挙げています。2年連続で競技成績面は昇格基準内だっただけに、なんとしても基準をクリアして申請まで漕ぎ着けたいところです。

③Jリーグ入会の承認及び競技成績

J3ライセンスを取得しているクラブは、11月に開催されるJリーグ理事会で

入会を承認される必要があります。承認にあたってまずは

・年間事業収入1.5億円

・前年度決算が債務超過でないこと

・1試合平均入場者数2,000人(ただしコロナ状況により21年は免除)

という事業面での条件が課されます。

その上で、競技面での成績(JFL全体で4位以内かつ百年構想クラブのうち上位2位以内)ものしかかってきます。

21年はJ3ライセンスを取得していた「いわきFC」がJFLで優勝しJ3の舞台へ旅立った一方で、同じくライセンスを取得していた鈴鹿ポイントゲッターズは最終順位4位となりましたが、3位のヴェルスパ大分が百年構想クラブだったため「百年構想クラブのうち上位2位」という条件まであと一歩届かず昇格を逃しました。

また、ここにHonda FCやソニー仙台FCが立ちはばかります。特にアマチュア最強チームといえるHonda FCは直近10シーズンのうち4連覇を含む優勝5回、4位以内が3回。サッカーファンからは「門番」の異名で愛されている名門チームと同等以上のチーム力が求められます。

「じっくり」か「一気に」か求められる経営センス

上記のように、Jリーグ入りを目指すクラブの中にも

・まずJリーグ百年構想入りを目指すクラブ

・J3ライセンスの取得を目指すクラブ

・事業面、競技面でのJリーグ入会基準クリアを目指すクラブ

の3つの層に分かれます。

3つのハードルをクリアする過程で「ホームタウンからの応援」「経営組織化」「競技面での強さ」を少しづつ骨太にしていくイメージでしょうか。

クラブの成長、Jリーグのクオリティコントロールの面では理に適ったシステムといえるでしょう。しかし、地域の熱が冷めないようなスピード感も求められます。

そしてJリーグのクラブ数を一旦は60でストップさせるという議論も進んでいるようで、現在58クラブということを踏まえると残りの枠は2。今後はJクラブとの入れ替え戦などの可能性も出てきそうです。J3ライセンスを取得している5クラブは、是が非でも今シーズンでの昇格を勝ち取りたいところです。

過去、JFLからJリーグ入会を果たしたクラブのJFL在籍シーズンは

・2022年 いわきFC/2年

・2021年 テゲバジャーロ宮崎/3年

・2020年 FC今治/3年

・2019年 ヴァンラーレ八戸/5年

・2017年 アスルクラロ沼津/3年

と、3年が一つの基準といえそうです。

Jリーグ入りを目指すクラブ経営者には、かなりのセンスが求められそうですね。Jリーグを目指すチーム同士の戦い、ピッチ上だけでない「強さ」を求めていく各クラブにも注目すると、JFLという舞台をより深く楽しむことができそうです。

2022年のJFLにもぜひご注目を!

加藤謙次郎

ヤクルト球団広報、侍ジャパン広報などを経て、スポーツビジネスをメインとしてコンサルティング事業を展開する株式会社R.E WORKSの社長に就任。推しを見つけるスポーツメディア「My Star Sports」主宰